エアバスとボーイング、操縦席に座ると何が違うのか
おはようございます。
「エアバスとボーイング、どっちがいいんですか?」——これは、私が一番よくいただく質問のひとつです。今日は、操縦席に座る立場から見た両者の違いをお話しして行きます。
一番の違いは「手に持つもの」
見た目で分かりやすい違いは操縦装置です。ボーイングは昔ながらの操縦輪(ヨーク)、エアバスは戦闘機のようなサイドスティックを採用しています。
エアバスの操縦席に初めて座った人がまず驚くのは、目の前に何もないことです。操縦輪がない代わりに、テーブルが出てきます。長いフライトで書類仕事をするには、正直とても便利です。
設計思想の違い:誰が最終決定者か
ただ、本質的な違いは操縦装置ではなく「設計思想」にあります。
エアバスは「コンピューターによる保護」を重視した設計です。パイロットがどんなに操作しても、機体が失速したり無理な姿勢になったりしないよう、システムが常に見守っています。
ボーイングは「最終的な権限はパイロットに」という思想です。システムの支援はありますが、いざというとき、パイロットの操作がシステムの制限を超えることを許す設計になっています。
どちらが正しいという話ではありません。ふたつの異なる哲学が、それぞれ何十年も安全運航を積み重ねてきた、というのが公平な見方だと思います。
パイロットは「乗り換え」できるのか
ちなみに、パイロットは同時に複数の機種を操縦することはできません。機種ごとに「型式限定」という資格が必要で、エアバスからボーイングに移るときは、数ヶ月かけて訓練をやり直します。
操縦の手順も、システムの考え方も、頭を丸ごと入れ替える必要があります。長年連れ添った相棒を替えるようなもので、簡単ではありませんが、新しい機種との出会いはパイロット人生の大きな楽しみでもあります。
おわりに
皆さんが次に飛行機に乗るとき、搭乗する機体がエアバスかボーイングか、少し気にしてみてください。窓から見える翼の形、エンジン音、着陸の感触。それぞれの個性が、少し違って感じられるかもしれません。
どちらの機体にも、それを信頼して飛ばすパイロットがいます。私はその両方の世界を、これからも皆さんにお伝えしていきます。