※ 本サイトはアフィリエイト広告およびGoogle AdSenseによる広告を含みます

航空知識

飛行機の「速さ」は1つではない。対気速度と対地速度の違い

おはようございます。

機内のモニターで飛行情報を見ていると、「対地速度 時速1,100km」のような数字が出ていることがあります。冬の日本からアメリカへ向かう便では、もっと大きな数字になる日もあります。

一方、同じとき操縦席の速度計は、それよりずっと小さい数字を指しています。どちらかが間違っているわけではありません。飛行機の「速さ」には種類があり、何に対する速さかが違うのです。

今日は、パイロットが使い分けている速さの種類と、なぜそうなるのかを説明します。

飛行機が使う速さは、主に4つです

  • 指示対気速度:翼が受ける空気の勢い。操縦に使います(失速しないか、速すぎないか)
  • 真対気速度:まわりの空気に対して実際に進む速さ。航法の計算に使います
  • 対地速度:地面に対して進む速さ。到着時刻や燃料の計算に使います
  • マッハ数:音の速さに対する割合。高い高度での巡航に使います

順番に説明します。

指示対気速度:翼が「感じている」速さ

操縦席の速度計が示しているのは、指示対気速度です。

機首の近くには、前に向かって開いた小さな管があります。飛んでいると、この管に空気が押し込まれます。その押し込む力の強さから速さを出しています。

大事なのは、これが翼が受けている空気の勢いそのものだという点です。翼が作る揚力は、この空気の勢いで決まります。ですから、失速しないか、機体の強度の上限を超えていないかは、この速さで判断します。離陸で機首を上げる速さや、着陸で近づく速さも、この速さで決めています。

真対気速度:空気が薄いと、実際にはもっと速く進む

ところが上空では、空気が薄くなります。空気が薄いと、同じ速さで進んでも管に押し込まれる力は弱くなります。すると速度計は、実際に空気の中を進んでいる速さより、小さい数字を示します。

実際にまわりの空気に対して進んでいる速さを、真対気速度と呼びます。

旅客機が巡航する高さでは、空気の濃さは地上の3分の1ほどです。このため、速度計が時速500km前後を指していても、実際には時速900km近い速さで空気の中を進んでいます。

空気の濃さと、速度計の数字 地上付近(空気が濃い) 速度計の数字 ≒ 空気の中を進む実際の速さ 巡航高度(空気が地上の約3分の1) 速度計:時速500km前後 < 実際の速さ:時速900km近く
空気が薄いと、同じ速さでも管に押し込まれる空気が少なく、速度計の数字は小さく出ます。数字はおおよその目安です。

翼にとっては、薄い空気の中を速く進むことと、濃い空気の中をゆっくり進むことは、同じ勢いの空気を受けることになります。ですから、操縦の判断には引き続き指示対気速度を使います。一方、どれだけの距離を進むかを計算するときは、真対気速度を使います。

対地速度:風が加わった、地面に対する速さ

飛行機は空気の中を進んでいます。そして、その空気自体が動いています。風です。

地面に対して実際に進む速さは、真対気速度に風を足したり引いたりしたものになります。これを対地速度と呼びます。機内モニターに出ているのは、この対地速度です。

上空には、ジェット気流と呼ばれる強い西風が流れています。冬には特に強くなり、時速200kmを超えることもあります。

  • 西から東へ向かう便は、この風に押されます。真対気速度が時速900kmなら、対地速度は時速1,100kmを超えることがあります
  • 東から西へ向かう便は、この風に向かって進みます。同じ真対気速度でも、対地速度は時速700km台に落ちることがあります

日本からアメリカ本土へ向かう便と、アメリカから日本へ戻る便とで、飛行時間が1〜2時間ほど違うことがあるのは、このためです。

機内モニターの対地速度が音の速さを超える数字になっていても、飛行機がまわりの空気に対して音速を超えているわけではありません。追い風に乗って、地面に対して速く進んでいるだけです。

マッハ数:高い所では、音の速さとの比べ方で飛ぶ

高い高度では、もう1つの速さを使います。マッハ数です。音の速さに対して、今どのくらいの割合で進んでいるかを示します。

旅客機は、音の速さに近づくと、翼の上の空気の流れが部分的に音速を超え、揺れが出たり抵抗が急に増えたりします。そのため、高い高度では「音速の何割で飛ぶか」を基準にするほうが都合がよいのです。旅客機の巡航は、多くの機種で音速の8割台です。

上空の音の速さは、気温で変わります。気温が低いほど遅くなります。そのため同じマッハ数で飛んでいても、気温によって真対気速度は少しずつ変わります。

パイロットは、場面によって見る速さを変えています

まとめると、場面ごとに使う速さは次のようになります。

場面ごとに主に使う速さ 離陸・上昇 指示対気速度 巡航 マッハ数(操縦)/ 対地速度(到着時刻・燃料) 降下・着陸 指示対気速度
操縦には空気に対する速さ、計画には地面に対する速さを使います。

離陸や着陸のように地面に近い場面では、翼が受ける空気の勢い、つまり指示対気速度がすべての基準です。巡航ではマッハ数で速さを保ち、到着時刻や残りの燃料の計算には対地速度を使います。

着陸のときも、風は考えます。向かい風なら対地速度は小さくなり、止まるまでの距離が短くなります。追い風なら逆に長くなります。空気に対する速さは同じでも、地面に対する速さが違えば、必要な滑走路の長さが変わります。

単位はノットです

最後に単位の話です。航空では、速さにノットを使います。1ノットは、1時間に1海里進む速さです。1海里は1,852メートルで、地球の緯度の1分ぶんの長さにあたります。地図の上で距離を測りやすいため、船と飛行機ではこの単位を使っています。

時速に直すときは、ノットの数字に約1.85を掛けます。速度計が250ノットなら、時速約460kmです。

おわりに

飛行機の速さには、翼が受ける空気の勢いである指示対気速度、空気に対して実際に進む真対気速度、地面に対する対地速度、音の速さとの割合であるマッハ数があります。

上空では空気が薄いため、速度計の数字は実際の速さより小さく出ます。そこにジェット気流の追い風が加わると、機内モニターの対地速度はさらに大きくなります。

次に飛行機に乗ったとき、行きと帰りで機内モニターの対地速度を比べてみてください。風の強さの違いが、そのまま数字に出ています。