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航空知識

飛行機はなぜ空を飛べるのか。数百トンの機体を持ち上げる、翼の本当の仕事

おはようございます。

「あんなに重い鉄の塊が、どうして空に浮くんですか」

これは、私が地上でお客様から一番よく聞かれる質問かもしれません。今日は、数式をいっさい使わずに、飛行機が飛ぶ仕組みをお話しして行きます。

まず、いちばん大事な一言から

むずかしい理屈の前に、結論を先にお伝えします。

翼の上面を流れる空気は、下面より速く流れます。空気は速く流れるところほど圧力が下がるので、翼の上側は圧力が低くなり、下側との差で翼全体が上へ吸い上げられる。 この上向きの力が「揚力」で、飛行機が浮く正体です。

一枚の紙の端を口の前に持って、紙の上の面に沿って息を吹いてみてください。紙がふわりと持ち上がります。上を流れる空気の圧力が下がって、下から押し上げられるからです。翼も、これと同じことを、けた違いの大きさでやっています。

翼の断面図。上面は空気が速く流れて圧力が低くなり(負圧)、下面は圧力が高いため、その差で上向きの揚力が生まれる。 揚力 上面:速い → 圧力が低い(負圧) 下面:遅い → 圧力が高い
翼の上面は空気が速く流れて圧力が低く(負圧)、下面は圧力が高い。この上下の圧力差が揚力になります。

上の図のように、翼の上面は流れが速くて圧力が低く、下面は流れが遅くて圧力が高い。この上下の圧力の差が、翼を上へ持ち上げます。

「速く進むこと」がすべての前提

ここで大切なのは、翼は、前に進んでいないと仕事ができないということです。

止まっている翼は、ただの金属の板です。エンジンが機体を前へ押し出し、翼のまわりに速い空気の流れが生まれて、はじめて持ち上げる力(これを揚力と呼びます)が生まれます。

だから離陸のとき、飛行機はまず滑走路を思いきり加速します。あれは、翼が仕事を始められる速さまで、機体を連れて行っているのです。十分な速さに達した瞬間、機首をそっと持ち上げると、機体はふわりと地面を離れます。

なぜ、上面の空気は速く流れるのか

翼の断面を横から見ると、上側がゆるやかに膨らみ、ほんの少し上を向くように取り付けられています。この形と角度のおかげで、翼の上を通る空気は引き伸ばされるように速く流れ、圧力が下がります。

ひとつ、よくある誤解を正しておきます。「上下に分かれた空気が、翼の後ろで同時に出会うために上側が速くなる」と説明されることがありますが、これは正しくありません。実際には、翼の形と空気の流れ方そのものが上面の流れを速くしていて、同時に出会う必要はどこにもないのです。

こうして生まれる上下の圧力の差が、数百トンの機体を静かに持ち上げています。

ではなぜ、揺れても落ちないのか

「浮く理由はわかった。でも、あんなに薄い翼で大丈夫なの」と思われるかもしれません。

ご安心ください。旅客機の翼は、見た目よりずっと頑丈です。地上で見ると水平にまっすぐ見えますが、飛行中は先端がしなるように上へ大きくたわみます。あれは弱いのではなく、しなることで衝撃を受け流すように、あえて設計されているのです。

試験では、想定される力の1.5倍をかけても壊れないことが確認されています。少しくらいの揺れで翼がどうにかなることは、まずありません。

おわりに

飛行機が飛ぶ仕組みは、突きつめると「翼の上と下にできる圧力の差で浮かぶ」という、シンプルな話です。

離陸で機首を持ち上げるたびに、この薄い翼が何百人ものお客様を支えていることを、あらためて感じます。

次に窓側の席に座ったら、少しだけ翼を眺めてみてください。あの翼の上下で生まれている小さな圧力の差こそが、あなたを空に浮かべている力の正体です。