なぜベテラン機長でも毎回チェックリストを読み上げるのか
おはようございます。
今日は、パイロットの仕事の中でも特に大切にしている「チェックリスト」についてお話しして行きます。飛行機に興味のない方にも、どこか参考になる部分があれば嬉しいです。
何千回やっても、必ず読み上げる
旅客機の運航では、出発前・離陸前・着陸前など、フライトの節目ごとにチェックリストを実施します。一人が項目を読み上げ、もう一人が状態を確認して答える。必ず声に出して、二人で行います。
正直に言えば、項目はすべて頭に入っています。何千回と繰り返してきた手順です。それでも省略することは決してありません。
「慣れ」こそが最大の敵だから
理由はシンプルで、人間は必ずミスをする生き物だからです。
そして経験を積むほど危険なのが「慣れ」です。いつもと同じ、今日も大丈夫——そう感じているときこそ、思い込みによる見落としが起こります。航空の歴史における事故の教訓の多くは、技量不足よりも、確認の省略や思い込みから生まれています。
チェックリストは「自分の記憶を信用しない」ための仕組みです。自分を疑うことは、弱さではなく、プロフェッショナルの技術だと私は思っています。
二人で行うことに意味がある
もうひとつ大切なのは、チェックリストを必ず二人で行うことです。
機長が間違えれば副操縦士が指摘する。副操縦士が見落とせば機長が気づく。操縦席では、経験や立場に関係なく「おかしいと思ったら言う」ことが徹底されています。相手がどんなベテランでも、です。
この「お互いに確認し合う文化」は、航空安全が長い年月をかけて築いてきた財産だと思います。
おわりに
私は今でも、乗務のたびに同じチェックリストを読み上げます。おそらく最後のフライトの日まで、一度も省略することはありません。
当たり前のことを、当たり前に、毎回やり切る。空の安全は、その積み重ねの上にあります。