離陸の順番待ちで、前の機と間隔が空くのはなぜか

おはようございます。
滑走路の手前で順番を待っているとき、前の飛行機が飛び立ったのに、こちらはまだ動かない。そんな時間があります。
「早く行けばいいのに」と思われるかもしれません。今日は、あの待ち時間の話をします。
翼は、渦を作りながら飛んでいます
以前、飛行機がなぜ飛べるのかを書きました。翼が空気を下に押しやることで、機体を持ち上げる力が生まれます。
このとき、翼の下側と上側では空気の圧力に差ができます。翼の先端では、圧力の高い下側から低い上側へ空気が回り込みます。この回り込みが、機体の後方に細長い渦として残ります。
渦は、翼の左右の先から一本ずつ、二本できます。目には見えませんが、そこには回転する空気の流れがあります。
以前に書いたウィングレットは、この回り込みを抑えて燃費を良くする装置です。抑えるとはいえ、渦がなくなるわけではありません。揚力を生んでいる限り、渦は必ずできます。
渦は、しばらくその場に残ります
問題は、渦がすぐには消えないことです。
作られた渦は、少しずつ下へ沈みながら、その場に数分間とどまります。風があれば、風に乗って横へ流れていきます。無風に近い日ほど、渦は滑走路の上に長く残ります。
そこへ後続機が入っていくと、片方の翼だけが渦につかまることがあります。すると機体が急に傾きます。高度が十分にあれば立て直せますが、離陸直後や着陸直前は、地面が近く、速度にも余裕がありません。
だから、間隔を空けます。
重い機体ほど、強い渦を作ります
渦の強さは、機体によって違います。
重い機体ほど、大きな揚力が必要です。大きな揚力は、強い渦を作ります。速度が遅く、機体が重いときほど渦は強くなります。離陸直後や着陸のときが、まさにその条件です。
そこで航空機は重さによって区分され、どの区分の後ろにどの区分が続くかで、必要な間隔が決められています。大型機の後ろに小型機が続くときが、いちばん長く待つ組み合わせです。逆に、小型機の後ろに大型機が続くときは、短くて済みます。
滑走路で「2分間お待ちください」と言われて止まっているとき、機内では何も起きていないように見えます。実際には、前の機が残していった渦が薄れるのを待っています。
見えないものを、決まりで避けています
後方乱気流の厄介なところは、目に見えないことです。
前に書いた気象レーダーにも映りません。雨粒ではないからです。センサーで直接とらえる方法も、日常の運航では使えません。
ですから私たちは、決まりで避けています。どのくらいの間隔を置けば安全かをあらかじめ決めておき、その通りにする。目で見て判断するのではなく、決められた数字を守る。
着陸のときも同じです。前の機との距離が足りなければ、管制から速度を落とすよう指示が出ます。それでも詰まってしまえば、進入をやめてやり直します。
出発が少し遅れる、上空で少し待たされる。その裏側には、こうした事情があります。
おわりに
前の機が離陸してもすぐに続かないのは、翼が作った渦が滑走路の上にしばらく残るためです。
渦は重い機体ほど強く、離陸直後や着陸直前という速度の遅い場面で強くなります。目には見えず、レーダーにも映らないため、重さの区分ごとに決められた間隔を守ることで避けています。




