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航空知識

飛行機はどうやって止まるのか。ブレーキと逆噴射の役割分担

おはようございます。

着陸したあと、機体はぐっと減速します。大きな音がするので、逆噴射で止まっていると思われている方が多いかもしれません。

実際には、止める力のほとんどは車輪のブレーキが出しています。今日は、飛行機が止まるまでに何が働いているのかを説明します。

止めるものは3つあります

接地してから機体が減速するまでに、順番に3つのものが働きます。

  1. 翼の上の板(スポイラー):接地した瞬間に立ち上がり、翼の揚力を減らします。これで機体の重さが車輪にかかり、ブレーキが効くようになります
  2. 車輪のブレーキ:減速の主役です。前輪以外の車輪に付いていて、機体の運動のエネルギーを熱に変えます
  3. 逆噴射(リバース):エンジンの排気の向きを前向きに変えて、押し戻す力を出します
接地してから止まるまで 接地 停止 ① スポイラー 揚力を減らし 車輪に重さをかける ② 車輪のブレーキ(主役) 運動のエネルギーを熱に変える 止まるまでずっと効く ③ 逆噴射(補助) 速いうちほどよく効く 滑りやすい日に価値が上がる 音が大きいのは③ですが、止める力の多くは②が出しています
減速は3つの組み合わせです。順番と役割が決まっています。

ブレーキは炭素の円盤です

旅客機のブレーキは、車のものとは作りが違います。

車輪の中に、円盤が何枚も重なって入っています。油圧で押しつけると、回っている円盤と止まっている円盤がこすれ合い、運動のエネルギーが熱に変わります。枚数が多いのは、1枚あたりの負担を減らし、広い面積で熱を受け止めるためです。

材料には炭素でできた円盤が広く使われています。金属より軽く、高い温度に耐えます。ただし冷えているときは効きが落ちる性質があり、何度か使って温まったほうがよく効きます。

ブレーキには、減り具合を外から見るための細い棒が付いています。整備士はこの棒の出具合を見て、交換の時期を判断します。

滑らないように、自動で緩めています

強く踏めば早く止まる、とはいきません。車輪がロックすると、タイヤが一点だけ削れ、かえって止まらなくなります。

そこで、車輪の回転を監視して、ロックしそうになると自動でブレーキを緩める仕組みが入っています。車のABSと考え方は同じです。濡れた滑走路や雪の滑走路では、この仕組みが細かく働いています。

さらに、着陸前に減速の強さを選んでおく「自動ブレーキ」もあります。弱・中・強のような段階から、滑走路の長さと状態に合わせて選びます。接地すると設定どおりの減速が始まり、パイロットが足で踏めばそちらが優先されます。

離陸の中断に備えた設定もあります。離陸滑走中にこの設定にしておくと、出力を絞った瞬間に最大の減速が始まります。中断は一刻を争うので、人の操作を待たない作りになっています。

逆噴射は「補助」です

逆噴射は、エンジンから後ろへ出ている空気の流れを、覆いで前向きに変える仕組みです。

効き目は速度が高いほど大きく、遅くなるほど小さくなります。そのため、速いうちに使い、ある速度まで落ちたら戻すのが基本です。低速まで使い続けると、巻き上げた砂や雪をエンジンが吸い込むおそれもあります。

乾いた長い滑走路では、逆噴射を使わなくても止まれる前提で計算しています。価値が上がるのは、濡れている、雪がある、滑走路が短い、といった場面です。ブレーキの負担を減らせるので、次の便までの冷却時間にも効いてきます。

夜間や住宅地に近い空港では、騒音のために逆噴射を控えめにすることがあります。そのぶんブレーキを多く使います。

ブレーキの温度を見ています

ブレーキは熱に変えて止めているので、使えば熱くなります。操縦席には温度の表示があり、着陸後はこれを見ます。

熱いまま次の離陸に向かうと、万一離陸を中断したときに止まりきれないおそれがあります。そのため、温度が下がるまで待つことがあります。冷却用の送風機が付いている機体もあり、待ち時間を短くできます。

着陸後のブレーキの温度 温度が下がっている そのまま次の便へ 通常の折り返し まだ高い 冷めるまで待つ 送風機で冷やす機体も 操縦席の温度表示で判断 理由=熱いままだと、離陸を中断したときに止まりきれない
着陸後の待ち時間には、こうした事情が隠れていることがあります。

車輪には、熱くなりすぎたときに空気を抜く栓も付いています。タイヤが破裂する前に、安全に圧力を逃がすための仕組みです。タイヤの話は別の記事で書きました。

駐機中もブレーキを使います

止まったあとも、ブレーキの仕事があります。

駐機場に入って停止したら、駐機用のブレーキをかけます。そのうえで、地上の作業員が車輪に輪止めを置きます。輪止めが置かれたことを確認してから、駐機用のブレーキを緩めることがあります。熱を持ったブレーキをかけたままにすると、冷えるときに固着するおそれがあるためです。

プッシュバックで押し出されるときは、ブレーキを踏みません。踏めば機体と牽引車の両方に無理な力がかかります。地上の作業員と操縦席のあいだで、「ブレーキを離した」「かけた」を声に出して確認します。

止まる距離は、毎回計算しています

着陸前には、その日の条件で止まれるかを計算します。

機体の重さ、風、滑走路の長さと勾配、濡れているか乾いているか。条件が悪ければ、自動ブレーキを強めに設定する、逆噴射を長めに使う、といった判断をします。必要なら、別の滑走路や別の空港を選びます。

滑走路の状態は、空港から数字で知らされます。雪や雨でどのくらい滑るかを表す指標があり、それを計算に入れます。「今日は滑りやすい」という感覚ではなく、数字で扱います。

おわりに

着陸した飛行機を止めているのは、主に車輪のブレーキです。接地の瞬間に翼の上の板が立ち上がって車輪に重さをかけ、ブレーキが効くようにします。逆噴射は補助で、滑りやすい滑走路や短い滑走路で価値が上がります。

ブレーキは熱に変えて止めているので、使えば熱くなります。着陸後に出発が少し待たされるとき、ブレーキを冷ましている時間かもしれません。