飛行機のタイヤは、なぜあの衝撃で壊れないのか

おはようございます。
着陸のとき、タイヤのあたりから白い煙が上がるのを見たことがあるかもしれません。「あれは大丈夫なのか」というご質問をいただきます。
大丈夫です。今日は、飛行機のタイヤの話をします。
止まった状態から、一瞬で時速200キロ超へ
まず、着陸の瞬間に何が起きているか。
飛行機は時速200キロを大きく超える速さで接地します。一方、タイヤは空中では回っていません。完全に止まった状態です。
その止まったタイヤが、滑走路に触れた瞬間に、機体の速度に合うところまで一気に回されます。回り始めるまでのわずかな時間、タイヤは路面の上を引きずられます。そのとき削れたゴムが、白い煙になって上がります。
滑走路の接地帯に黒い筋が濃く残っているのは、削れたゴムが積み重なったものです。定期的に除去する作業が行われるほどの量になります。
タイヤにとっては、着陸のたびに一番きつい仕事をしている瞬間です。
中身は空気ではなく、窒素です
タイヤに入っているのは、空気ではありません。窒素です。
理由がいくつかあります。ひとつは、水分をほとんど含まないこと。上空はかなりの低温になりますから、中に水分があると凍って厄介です。
もうひとつは、温度が変わっても圧力が安定していること。飛行機のタイヤは、地上の暑さと上空の寒さのあいだを毎回往復します。
そして、燃えにくいこと。ブレーキは着陸のたびに高温になります。すぐ隣に酸素を多く含む気体を入れておきたくはありません。
圧力もかなりのものです。乗用車のおよそ6倍にあたる高い圧力で入っています。だからタイヤは、見た目よりずっと硬く張っています。
自分から空気を抜く仕組みがあります
強く踏んだブレーキは、大量の熱を生みます。その熱は、すぐ隣のタイヤにも伝わります。
高い圧力のタイヤが熱で膨張し続ければ、破裂の危険があります。破裂は、周囲の機器や人にとって非常に危険です。
そこで車輪には、一定の温度を超えると溶ける栓が組み込まれています。熱くなりすぎると、この栓が溶けて穴が開き、中の窒素が抜けていきます。タイヤはぺしゃんこになりますが、破裂はしません。
壊れた、のではありません。危ないほうを避けるために、そうなるよう作られています。
溝は模様ではなく、排水路です
タイヤをよく見ると、まっすぐな溝が数本走っているだけで、乗用車のような複雑な模様がありません。
飛行機のタイヤの溝は、水を逃がすためのものです。濡れた滑走路では、タイヤと路面のあいだに水の膜ができて、接地が失われることがあります。この溝が、その水を横に逃がします。
寿命は、着陸の回数でおおむね決まります。一定の回数を使ったら外し、表面のゴムを貼り替えて再び使います。この貼り替えは1本につき何度か繰り返せます。使い捨てではありません。
おわりに
飛行機のタイヤは、止まった状態から一瞬で時速200キロ超まで回され、数十トンの荷重を受け止めています。あの白い煙は、その瞬間に削れたゴムです。
中身は高圧の窒素で、熱くなりすぎたときは自分から空気を抜きます。目立たない部品ですが、毎回の着陸でいちばん過酷な仕事をしているのは、間違いなくこのタイヤです。




