なぜ飛行機の左の翼は赤、右の翼は緑に光るのか

おはようございます。
夜、空港の近くで空を見上げると、飛行機がいくつもの灯りをつけて飛んでいるのが見えます。じっと点いている赤と緑、規則正しく点滅する赤、ときどきまぶしく光る白。
あの灯りは飾りではありません。どの色を、どこに、どの角度まで見えるようにつけるかが、細かく決められています。
今日は、飛行機の外側についている灯りの話をします。なぜ左が赤で右が緑なのか、そして色の見え方から相手の飛行機の向きがどう分かるのかを順に説明します。
夜は、灯りをつけて飛ぶことが法律で決まっています
まず、灯りをつけることそのものが決まりです。
日本の航空法では、航空機は**夜間(日没から日出までの間)**に飛ぶとき、灯火で自分の存在を示さなければならないと定められています(航空法第64条)。
どの灯りをつけるかは、航空法施行規則(国の省令)に書かれています。夜間に空中や地上を移動するときは、次の4つで機体を示すことになっています(航空法施行規則第154条)。
- 衝突防止灯:点滅して、遠くからでも存在を知らせる灯り
- 右舷灯:右の翼端の灯り(右舷は船の言葉で、右側のこと)
- 左舷灯:左の翼端の灯り
- 尾灯:機体の後ろ側の灯り
このうち右舷灯、左舷灯、尾灯の3つをまとめて、航法灯(ポジションライト)と呼びます。アメリカの規則でも、日没から日出までは航法灯をつけて飛ぶことが求められています(米国連邦航空規則14 CFR 91.209)。
左が赤、右が緑、後ろが白
色の配置は、旅客機の設計基準で決められています。アメリカの耐空基準(機体が安全に飛べることを確かめるための設計の決まり、14 CFR 25.1385)では、次のように書かれています。
- 前向きの灯りは赤と緑の2つで、左右にできるだけ離して取り付ける
- 普通に飛んでいる姿勢で、赤が左、緑が右
- 後ろ向きの灯りは白で、できるだけ後ろに取り付ける
左右の翼端がいちばん離れた場所なので、赤と緑はそこに付きます。白は尾部の先端、あるいは左右の翼端の後ろ向きに付けている機種もあります。
赤が左、緑が右という組み合わせは、船と同じです。日本の海上衝突予防法でも、船の左側には紅灯(赤)、右側には緑灯をつけると定められています(第21条)。夜の海で船同士が向きを読み取るのと同じ考え方を、空でも使っています。
見える角度も決まっています
大事なのは色だけではありません。それぞれの色が、どの方向から見えるかも決まっています(14 CFR 25.1387)。
- 赤:機首の真正面から、左へ110度まで
- 緑:機首の真正面から、右へ110度まで
- 白:真後ろを中心に、左右70度ずつ、合わせて140度
110度と110度と140度を足すと360度です。つまり、真上から見て機体のまわりをぐるりと3つに分け、どの方向から見ても、基本的に1つの色が見えるように割り振られています。
境目のあたりでは、隣り合う色が少し重なって見える範囲があります。基準では、その重なりの部分で光が強くなりすぎないよう、明るさの上限まで決められています(14 CFR 25.1395)。
色の見え方で、相手の向きが分かります
この配置のおかげで、夜に遠くの飛行機の灯りを見ただけで、相手がどちらを向いて飛んでいるかが分かります。
- 赤と緑が並んで見える:相手の機首が、こちらを向いています。正面に近い方向から近づいてきています。向かい合っているので、こちらから見ると左に緑、右に赤です
- 赤だけが見える:相手の左側を見ています。こちらから見て、右から左へ横切る向きです
- 緑だけが見える:相手の右側を見ています。こちらから見て、左から右へ横切る向きです
- 白だけが見える:相手の後ろ側を見ています。遠ざかる向きです
点滅する衝突防止灯で「そこに飛行機がいる」ことに気づき、航法灯の色で「どちらを向いているか」を読み取る。夜の空では、この2段階で相手を把握します。
赤が右に見えたら、道を譲る側です
この色の配置は、空の「道の譲り方」ともつながっています。
航空法施行規則では、同じ種類の航空機同士の進路が交わるときは、相手を右側に見る航空機が進路を譲ると決められています(第181条)。正面に近い角度で向かい合ったときは、お互いに右へ進路を変えます(第182条)。
右側から横切ってくる相手は、こちらに左の翼を向けています。つまり、右側に赤い灯りが見えたら、こちらが譲る側です。逆に、左側に緑が見えているときは、相手から見てこちらが右側にいるので、相手が譲る側になります。
もちろん、旅客機同士の間隔は、管制官が高度や経路で確保しています。空中衝突を避ける装置も別にあります。それでも、外を見て相手を見つけるという基本は変わりません。灯りの決まりは、その基本を支える仕組みです。
赤い点滅と白いストロボ:衝突防止灯
航法灯とは別に、点滅する灯りがあります。これが衝突防止灯です。
アメリカの耐空基準では、衝突防止灯は赤か白で、点滅の回数は1分間に40回から100回、機体の水平面から上下75度以上の範囲を照らすことが求められています(14 CFR 25.1401)。上からも下からも見えるように、という意味です。
AIMによると、衝突防止灯には回転灯(ビーコン)やストロボが使われ、多くの機体が両方を備えています(AIM 4-3-24)。
- 赤いビーコン:赤く点滅する灯り
- 白いストロボ:一瞬だけ強く光る白い閃光
アメリカの規則では、衝突防止灯を備えた機体は、昼も夜も点けて飛ぶことになっています。ただし、雲の中で光が反射して操縦の妨げになるときなど、安全のために機長が消す判断をしてよいとされています(14 CFR 91.209)。日本の規則にも、自機や他機の航行に悪影響を及ぼすおそれがある場合は航法灯だけで示してよい、という例外があります(航空法施行規則第154条)。
点け方の目安として、アメリカの航空情報マニュアル(AIM:パイロット向けの公式の手引き)は、次のように勧めています(AIM 4-3-24)。
- 航空会社は、エンジンが回っている間は赤いビーコンを点ける。後ろにいる小型機や地上の作業員に、エンジンの噴流の危険を知らせるためです
- 白いストロボは、地上で他のパイロットや作業員の目をくらませるときは消しておく。雲で反射するときも同じ
つまり地上では、赤いビーコンの点滅が「この機体のエンジンは回っている」という目印として使われています。ただしAIMは、自主的な取り組みなので、ビーコンだけを頼りにエンジンが回っているかを判断しないよう注意も添えています。
着陸灯、ロゴライトなど
ほかにも、目的ごとの灯りがあります。
- 着陸灯:前方を照らす強い白い灯り。滑走路を照らすだけでなく、周りから見つけてもらうためにも使います
- タキシーライト:地上を走るときに前方を照らす灯り(タキシーは地上走行のこと)
- ロゴライト:尾翼に描かれた会社のマークを照らす灯り。機体を目立たせます
着陸灯の使い方について、AIMは「ライトオン」という自主的な安全の取り組みを紹介しています。離陸許可を受けたら、あるいは離陸の滑走を始めたら着陸灯を点けること。そして高度10,000フィート(約3,000メートル)より下では、昼夜を問わず着陸灯を点けること、特に空港から10マイル以内や、視界が悪いとき、鳥が多い場所ではそうすることを勧めています。
地上についても目安があります(AIM 4-3-24)。
- 地上走行を始める前に、航法灯、衝突防止灯、ロゴライトを点ける
- 動いている間、または動こうとしている間はタキシーライトを点け、止まったら消す。周りに「動きます」「止まっています」と伝えるためです
- 滑走路に入って離陸を待つときは、着陸灯以外の灯りを点けて、着陸してくる機や管制官から見えやすくする
- 滑走路を横切るときは、機長の判断で外部の灯りをすべて点けることが勧められています
実際にどの灯りをいつ点けるかは、機種の手順と各社の運航規程で決まっています。ここで挙げたのは、公開されている規則と手引きに書かれた目安です。
おわりに
飛行機の灯りには、それぞれ決まった色、位置、見える角度があります。
左の翼端は赤、右の翼端は緑で、それぞれ機首から110度まで。尾部の白は後ろの140度。合わせてちょうど360度になり、どの方向から見ても1つの色が見えます。だから、色を見れば相手の向きが分かります。
点滅する赤と白は衝突防止灯で、存在を知らせるための灯りです。着陸灯やロゴライトは、見つけてもらうための灯りとしても使われています。
夜に空港の近くで飛行機を見る機会があったら、赤と緑のどちらが見えているかを確かめてみてください。見えた色から、その飛行機がどちらへ向かっているかが分かります。夜の空港の灯火については、夜間飛行の記事でも書きました。




