離着陸のとき機内の照明を暗くするのは、なぜか

おはようございます。
夜の便で、離陸の前と着陸の前に客室の照明が暗くなります。「雰囲気を出しているのですか」と聞かれたことがありますが、そうではありません。
今日は、あの照明の意味についてお話しします。
目が暗さに慣れるには、時間がかかります
人の目は、明るい場所から暗い場所へ移ったとき、すぐには見えるようになりません。暗さに慣れるまでに時間がかかります。数十秒でだいぶ見えるようになりますが、しっかり慣れるには数分単位の時間が必要です。
逆に、暗い場所にいてから急に明るくなったときは、わりとすぐに順応します。困るのは、明るいところから暗いところへ移るときです。
ここで考えていただきたいのが、夜間に機外へ脱出する場面です。
煌々と明るい客室にいた状態から、いきなり暗い屋外へ出ることになります。もし目が明るさに慣れきっていたら、外に出た瞬間、しばらく何も見えません。地面の状態も、どちらへ逃げればいいかも分かりません。
だから、あらかじめ暗さに目を慣らしておきます。照明を落とすのは、その準備です。
非常灯そのものが、明るくありません
もうひとつ理由があります。
万一のとき、通常の照明は使えなくなる可能性があります。そのとき頼りになるのは非常灯と、通路の床に埋め込まれた誘導灯です。
ただ、これらは決して明るいものではありません。電源が限られているので、控えめな光量で長く点き続けるように作られています。明るさに慣れた目では、この控えめな光が見えにくいのです。
暗さに慣れた目でなら、床の誘導灯を追って出口までたどり着けます。照明を落としておくことは、この灯りを「使える灯り」にしておくことでもあります。
日よけを開けるのも、同じ理由です
離着陸の前には、窓の日よけを開けるようお願いしています。これも同じ考え方です。
外の様子が見えれば、機内と外の明るさの差が小さくなります。そして何より、外で何が起きているかが分かります。どちら側が使える状況か、外に何があるか。客室乗務員は、その情報をもとに脱出の方向を判断します。
日よけが下りていると、外の状況が分からないまま扉を開けることになります。それは避けたい。
座席を起こす、テーブルを戻す、足元の荷物を収める。これらもすべて、通路へ出るまでの動きを邪魔しないための準備です。
離陸と着陸に集中している時間帯です
飛行の中で、離陸と着陸の前後は最も注意を要する時間帯です。
この時間帯、操縦席では会話を必要最小限にします。客室の準備も、この時間帯に合わせて整えられます。照明を落とすのは、その一連の準備のひとつです。
暗くなったら、そろそろ動きがある時間だと思っていただければと思います。
おわりに
夜の離着陸で機内が暗くなるのは、目を暗さに慣らしておくためです。明るさに慣れた目のままでは、外へ出た直後に何も見えません。
日よけを開けるのも、座席を起こすのも、目的は同じところにあります。何も起きないのがいちばんですが、その何もない飛行のために、毎回同じ準備をしています。




