※ 本サイトはアフィリエイト広告およびGoogle AdSenseによる広告を含みます

航空知識

パイロットの勤務時間は、どうやって決まっているのか

おはようございます。

長距離便に乗ったとき、「このパイロットは何時間働いているのだろう」と思われたことがあるかもしれません。

今日は、勤務時間の決まりについてお話しします。

上限は法令で定められています

パイロットの勤務は、会社が自由に組めるものではありません。

日本では航空法にもとづき、国が定めた基準の範囲内で、各社が運航規程に勤務時間と休養の基準を定めています。会社はその規程に従って勤務を組み、国の確認を受けています。

決められているのは、主に次の3つです。

  • 乗務時間:実際に機体を操縦している時間の上限
  • 勤務時間:出社してから解放されるまでの時間の上限
  • 休養時間:勤務と勤務の間に確保しなければならない時間

これらは1日単位だけでなく、1か月、1年といった長さでも上限があります。

勤務時間(出社してから解放されるまで) 乗務時間(操縦している時間) 休養時間 次の勤務までに 必ず確保する 出社 解放 それぞれに上限があり、1日・1か月・1年の単位で管理される
勤務時間と乗務時間は別のものです。休養時間にも下限があります。

出発時刻や便数で条件が変わります

上限は、一律ではありません。

早朝や深夜にかかる勤務、日をまたぐ勤務は、体への負担が大きくなります。こうした時間帯を含む勤務は、上限が短くなります。1日に何便飛ぶかによっても変わります。

長距離便では、途中で交代できるよう3人や4人で乗務することがあります。人数を増やすことで、1人あたりの操縦時間を減らし、機内で休養をとる時間を確保します。長距離便の機内には、乗務員が横になれる区画が用意されています。

機内での休養は、決まった場所でとります

交代要員を乗せる長距離便では、操縦を担当していない乗員が決まった時間に休みます。

休む場所は、客室とは分けられた専用の区画です。機種によって、客室の上や操縦席の後ろに、横になれる寝台が用意されています。休養の時間になったら操縦席を離れ、ここで体を横にします。

操縦席の人数が一時的に減る間も、2人以上で操縦にあたる体制は変わりません。誰がいつ休むかは、出発前の打ち合わせで決めておきます。

待機も、勤務のひとつです

飛ぶ予定がなくても、勤務になっている日があります。予備の乗員として待機する日です。

急に体調を崩した乗員が出たときや、遅延で乗員の交代が必要になったときに、すぐ代わりに入れるよう待機します。空港で待つ場合と、自宅などで連絡を待つ場合があり、それぞれに時間の決まりがあります。待機している時間も、条件によっては勤務時間として数えられます。

時差の影響も考えます

国際線では、時差も体に影響します。現地に着いてからの休養時間や、次に飛ぶまでの間隔は、時差による疲れも考えて組まれています。

休み方の工夫については、時差ボケの記事で書きました。

遅延のときは、確認が必要になります

前に書いた出発の遅れの話とつながります。

出発が大きく遅れると、その便を最後まで飛び終えたときに上限を超える可能性が出てきます。超える見込みであれば、その日の運航をそこで終える、あるいは交代の乗務員を手配することになります。

「乗務員の到着が遅れているため」という案内を聞いたことがあるかもしれません。前の便の遅れが、こうして次の便に影響することがあります。

繁忙期でも、上限は変わりません

夏休みや年末年始は便が増えます。それでも、1人あたりの上限は変わりません。

そのため航空会社は、乗員が上限を超えないよう、何か月も前から勤務を組み、必要な人数を確保しています。予定していた乗員が1人欠けると、ほかの乗員の上限にも余裕がなくなるため、待機の乗員を置いておく意味が大きくなります。

誰が何時間乗務したかは、会社が記録として管理しています。記録は国の監査でも確認されます。夏の繁忙期の勤務の様子は、別の記事で書きました。

疲れは、時間だけでは測れません

同じ時間働いても、疲れ方は同じではありません。夜通しの勤務と昼間の勤務、揺れの多い日と穏やかな日では、体への負担が違います。

そのため最近は、決まった時間を守るだけでなく、疲れそのものを管理する考え方が国際的に広がっています。勤務の組み方が実際にどのくらい疲れを生むかをデータで確かめ、組み方を見直していくやり方です。国の基準も、こうした知見をもとに見直しが進められています。

体調は自分で申告します

決まりとは別に、自分の状態を申告する仕組みもあります。上限は「ここまでなら働かせてよい」という線で、「ここまでは必ず飛べる」という保証ではありません。

十分に眠れていない、体調がすぐれない。こうした場合は、乗務の前に申し出ます。申し出たことで不利に扱われない、という前提があってこそ働く仕組みです。

薬にも注意します。市販の風邪薬や花粉症の薬の中には、眠気や判断の遅れを起こすものがあり、飲んだまま乗務できないものがあります。薬を使うときは、乗務してよいかを航空会社の医師などに確認します。数字の上では飛べる勤務でも、状態が整っていなければ飛びません。

言い出しにくい空気を作らないことが大切だと考えています。これは、操縦席で気づいたことを遠慮なく言い合うのと同じ考え方です。

おわりに

パイロットの乗務時間、勤務時間、休養時間には、法令にもとづく上限が定められています。時間帯や便数によって条件が変わり、長距離便では交代要員を乗せて負担を分けています。

遅延で乗務員の交代が必要になることがあるのは、この決まりによるものです。