飛行機の窓が小さくて角が丸いのは、なぜか

おはようございます。
客室の窓は、家の窓と比べるとずいぶん小さく、角が丸くなっています。もっと大きければ景色がよく見えるのに、と思われるかもしれません。
今日は、あの形になっている理由をお話しします。
胴体は、風船のように膨らんでいます
飛行中、機内は地上に近い気圧に保たれています。外の気圧は低いので、胴体は内側から押し広げられている状態です。
離陸のたびに膨らみ、着陸のたびに戻る。これを何万回と繰り返します。金属は、この繰り返しに弱いという性質があります。少しずつ疲れがたまり、弱いところから割れが始まります。金属疲労と呼ばれる現象です。
窓は、その胴体に開けた穴です。穴の周りには力が集中しやすくなります。
角があると、そこに力が集まります
ここが、形の話につながります。
四角い窓の角のように、鋭く曲がった部分があると、力がその一点に集まります。応力集中といいます。集中した場所からひび割れが始まりやすくなります。
角を丸くすると、力が周囲へ分散します。だから客室の窓は、四隅が丸い形になっています。
過去の事故から学んだ設計です
この考え方は、世界初のジェット旅客機コメットの事故から得られたものです。1950年代、飛行中に空中分解する事故が続きました。
調査の結果、原因のひとつが与圧の繰り返しによる金属疲労と、四角い開口部の角への応力集中だったとされています。この教訓が、今の設計に受け継がれています。
角を丸くする、窓を小さくする。地味な形ですが、多くの検証の結果としてこの形になっています。
窓と座席の位置が合わない理由
窓際の席を選んだのに、目の前が壁だった。そんな経験がある方もいると思います。
窓の位置は、胴体の骨組みで決まっています。胴体には輪のような骨組みが一定の間隔で並んでいて、窓はその間に開けられています。骨組みを切るわけにはいかないので、窓の位置は機体を作った時点で決まり、あとから動かせません。
一方、座席の並べ方は航空会社が決めます。座席の前後の間隔を変えれば、窓との位置関係もずれます。同じ機種でも、航空会社や座席の等級によって見え方が違うのはこのためです。
787の窓が大きい理由
ボーイング787の窓は、ほかの旅客機より縦に大きく作られています。
787は、胴体に炭素繊維の複合材を使っています。金属と違って繰り返しの力で疲れにくいため、窓を大きく開けても強度を保ちやすくなりました。
787の窓には、日よけの板もありません。ボタンを押すと窓自体の色が段階的に濃くなる仕組みです。完全に真っ暗にはならず、外の様子がうっすら見える状態まで暗くなります。
窓は3枚重ねになっています
もうひとつ、窓の構造にも触れておきます。
客室の窓は、板が3枚重ねになっています。外側と中間の2枚が圧力を受け持ち、内側の1枚は乗客が直接触れる保護用です。圧力は主に外側が受け、中間はその予備という関係です。
中間の板には、小さな穴が開いています。手を当てると分かる、あの小さな穴です。これは2枚の間の圧力を客室側と同じにして、曇りや結露を防ぐ役割があります。ふさがないでいただければと思います。
窓際の席から見えるもの
翼の近くの窓際に座ると、飛行機の動きがよく見えます。
離着陸のときは、翼の後ろ側の板が後ろへ伸びて、下向きに曲がっていく様子が見えます。フラップと呼ばれる部分で、ゆっくり飛んでも十分な揚力を得るための装置です。着陸して車輪が地面についた直後には、翼の上の板が一斉に立ち上がります。翼の揚力を減らして、車輪をしっかり地面に押しつけ、ブレーキを効かせるためです。
翼の端が上に反り返っている機体なら、その形も見えます。燃費をよくするための形で、ウィングレットの記事で詳しく書いています。フラップの仕組みは、別の記事で書きました。
非常口のそばの窓
翼の上あたりには、非常口を兼ねた窓があります。見た目はほかの窓とあまり変わりませんが、緊急時には内側から外して脱出口になります。
この窓のそばの座席は、非常口座席と呼ばれます。緊急時に客室乗務員の手伝いをお願いすることがあるため、座れる方には条件があります。予約や搭乗のときに確認があるのは、このためです。
離着陸のとき窓の日よけを開けていただくのも、外の様子をすぐ確認できるようにするためです。理由は機内の照明を暗くする話と同じです。
操縦席の窓は、さらに厚く作られています
操縦席の前の窓は、客室の窓とは作りが違います。
離着陸のときに鳥がぶつかることを考え、強い衝撃に耐えられるよう、何枚もの層を重ねた厚い構造になっています。国際的に使われている基準でも、決められた重さの鳥が高速でぶつかっても突き抜けないことが求められています。
さらに、窓の中には電熱線が入っていて、飛行中は温めています。上空の冷たい空気で曇ったり凍ったりするのを防ぐためです。温めることで、ガラスが衝撃に強い状態を保つ役目もあります。
おわりに
客室の窓が小さく、角が丸いのは、与圧の繰り返しによる金属疲労と、角への力の集中を避けるためです。過去の事故から得られた知見が、そのまま形になっています。
次に窓際に座ったら、四隅の丸みと、あの小さな穴を見てみてください。




