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航空知識

鳥が飛行機にぶつかる「バードストライク」。実際どうなるのか

おはようございます。

飛行機に鳥がぶつかることを「バードストライク」と呼びます。ニュースで耳にしたことがある方も多いと思います。今日は、これが実際どういうものかをお話しします。

めずらしいことではありません

まず率直にお伝えすると、バードストライクは特別に珍しい出来事ではありません。日本国内でも、年に千件を超える報告があります。

その多くは、機体に小さな跡が残る程度で終わります。ただし、当たる場所や鳥の大きさによっては、点検や部品の交換が必要になり、出発が遅れることもあります。

起きやすいのは、離陸と着陸のとき

鳥が飛んでいるのは、多くが低い高度です。そのため、バードストライクは離陸と着陸の前後に集中します。

この時間帯は、機体が地面に近く、速度も高度も変化している最中です。だからこそ、鳥の存在は無視できない要素になります。逆に、巡航している高い高度では、まず起こりません。

鳥がいるのは、この低い高度 巡航中はほぼ起きない 離陸 着陸
鳥が飛んでいるのは低い高度です。そのため衝突は離陸と着陸の前後に集中し、巡航中はほとんど起きません。

機体は、ぶつかる前提で作られています

鳥が当たりやすいのは、機首、操縦席の窓、翼の前の縁、エンジンです。どれも前を向いている部分です。

これらの部分は、鳥がぶつかることを前提に強度が決められています。国際的に使われている基準では、たとえば操縦席の窓は、約1.8キログラムの鳥が巡航に近い速さでぶつかっても突き抜けないことが求められています。尾翼にも、同じように鳥の衝突に耐える強さが求められます。

もちろん、これを超える大きな鳥や、群れにまとめてぶつかる場合もあります。基準は「どんな場合でも無傷」という意味ではなく、「一般的に起こりうる衝突で、安全に飛び続けられる」ことを求めるものです。

エンジンに入ると、どうなるか

いちばん心配されるのが、エンジンに吸い込まれる場合です。

旅客機のエンジンは、鳥が入っても一定の条件下で安全を保てるよう、設計と試験の段階で確認されています。実際に鳥を模したものを吸い込ませる試験も行われています。

それでも、大きな鳥や複数の鳥が入れば、エンジンが正常に働かなくなることがあります。その場合は、残ったエンジンで飛行を続け、近くの空港へ降ります。エンジンが1つ止まっても飛べるように設計されているのは、こうした事態も想定してのことです。

「ハドソン川の奇跡」をご存じでしょうか

バードストライクの話をするとき、必ず挙がるのがこの出来事です。

2009年1月15日、ニューヨークのラガーディア空港を離陸したUSエアウェイズ1549便は、上昇中にカナダガンの群れに遭遇しました。離陸から1分半ほどで両方のエンジンが推力を失い、空港へ戻ることも、近くの空港へ向かうこともできない状態になりました。

機長は、ハドソン川への着水を選びました。離陸から着水まで、わずか208秒。乗客乗員155人全員が生還し、「ハドソン川の奇跡」と呼ばれるようになりました。のちに映画にもなっています。

この出来事は、バードストライクが最悪の場合どうなりうるかを示すと同時に、限られた時間の中で選択肢を絞り込み、決めることの重さも示しています。奇跡という言葉で語られますが、その中身は、訓練と手順、そして短い時間での判断でした。

ぶつかったあとの点検

鳥がぶつかった、あるいはぶつかった可能性がある場合は、着陸後に整備士が点検します。

どこに当たったのかを探すために、機体の表面に残った跡を一つずつ確認します。エンジンに入った可能性があれば、細いカメラを差し込んで内部の羽根に傷がないかを見ます。問題がないと確認できるまで、その機体は次の便に使えません。

残った羽根などは、鳥の種類を調べるために回収されることがあります。どの種類の鳥が、どの季節に、どの高さでぶつかっているのか。その記録が、空港の対策に生かされます。

増える時期と場所

バードストライクは、一年中同じように起きるわけではありません。鳥の渡りの時期や、ひなが巣立って飛び始める時期には、空港の周りを飛ぶ鳥が増えます。

海や川、干潟に近い空港は、水辺に集まる鳥の影響を受けやすくなります。日本の空港には海沿いに作られたものが多く、鳥への対策は欠かせません。

空港では、鳥を寄せつけない工夫をしている

対策は機体側だけではありません。空港でも、鳥を減らす取り組みが続けられています。

  • 音や光で鳥を追い払う
  • 草の長さを管理し、餌となる虫を減らす
  • 水たまりをなくし、鳥が集まりにくくする
  • 鳥の目撃情報を共有し、パイロットに知らせる

地味な作業の積み重ねですが、これが実際に効いています。

私たちがしていること

出発前や着陸前に、鳥の情報が入ることがあります。「滑走路の近くに群れがいる」といった連絡です。

その場合は、離陸を少し待つ、進入をやり直すといった判断をします。

離陸や着陸の途中で鳥がぶつかった、あるいはぶつかった疑いがある場合は、管制に伝えます。滑走路に鳥の残骸が落ちていないか確認してもらうためと、後に続く飛行機に注意を促してもらうためです。無理に急がず、状況が落ち着いてから動く。これがいちばん確実です。

おわりに

バードストライクは、日常的に起きうる出来事です。多くは大事に至りませんが、機体もエンジンも、そして空港の運用も、それを前提に備えられています。

もし出発が遅れて「鳥の確認のため」と案内されたら、点検をきちんと行っている時間だと受け取っていただければと思います。