機内が乾燥するのはなぜか。上空の空気と湿度の話

おはようございます。
飛行機に乗ると喉が渇く、肌が乾く。そう感じる方は多いと思います。実際、機内の湿度は地上よりかなり低くなります。
今日は、その理由をお話しします。
上空の空気には、水分がほとんどありません
機内の空気は、外の空気を取り込んで作られています。
高度1万メートル付近の空気は、氷点下数十度です。冷たい空気は水蒸気をほとんど含めません。その空気を機内で暖めると、温度は上がっても水分の量は増えないので、相対湿度は大きく下がります。
冬に暖房をつけた部屋が乾燥するのと、起きていることは同じです。ただ、外の空気がもともと非常に乾いているぶん、機内のほうが下がり方は大きくなります。
飛行中の機内の湿度は、おおむね10〜20パーセント程度です。快適とされる40〜60パーセントと比べると、かなり低い数字です。
季節による違いは、あまりありません。夏の地上が蒸し暑くても、巡航する高さの空気は一年を通して冷たく乾いています。夏の便でも喉が渇くのは、このためです。
空気は、数分ごとに入れ替わっています
乾燥とあわせて、「機内の空気はずっと同じものを吸っているのでは」と聞かれることもあります。実際には、外から取り込んだ空気と、フィルターを通した機内の空気を混ぜて送り込み、客室の空気は数分で入れ替わるように作られています。
フィルターは、病院の手術室などでも使われる細かい粒子まで捕らえる種類のものが、多くの旅客機で使われています。機内の空気の話は、別の記事で詳しく書きました。
外の空気を多く取り込むほど、機内はさらに乾きます。新鮮な空気と湿度は、どちらかを取るともう一方が下がる関係にあります。
加湿しない理由もあります
では加湿すればよいのでは、と思われるかもしれません。ただ、機体側の事情があります。
水分は金属を腐食させます。壁の内側や構造材の隙間で結露が続けば、傷みにつながります。加湿装置そのものの重さや水の重さも、燃料消費に影響します。
このため、多くの機体では湿度を積極的に上げていません。
787は少し事情が違います
ボーイング787は、胴体の主要部分に炭素繊維の複合材を使っています。金属より腐食を気にしなくてよいため、機内の湿度を従来機より高めに設定できます。
また787は、エンジンから空気を抜くブリードエア方式ではなく、電動のコンプレッサー(CAC)で外気を圧縮して取り込む方式です。与圧の高度設定も低めにとられています。「787は乗ったあとが楽」と言われることがあるのは、こうした違いによります。
機内の気圧は、山の上と同じくらいです
乾燥とあわせて知っておいていただきたいのが、機内の気圧です。
上空の機内は、地上と同じ気圧に保たれているわけではありません。多くの旅客機では、標高2,400メートル程度の山の上と同じくらいの気圧になるよう設計されています。富士山の五合目あたりに近い高さです。787は、これより低い標高1,800メートル程度に保てるよう作られています。
気圧が低いと、同じように息をしても、体に取り込める酸素が地上より少し減ります。健康な方が普段気づくことはほとんどありませんが、長い便で疲れやすく感じる理由のひとつになります。乾燥と重なると、体の負担は大きくなります。
乾燥が体に与える影響
湿度が低いと、喉や鼻の粘膜が乾きます。粘膜には、ほこりや細菌を外へ運び出す働きがあり、乾くとその働きが弱まるとされています。長い便のあとに喉がいがらっぽくなるのは、このためです。
目も乾きます。まばたきが減る映画や読書の間は、特に乾きやすくなります。コンタクトレンズを使っている方は、レンズが目の水分を奪うため、さらに乾きを感じやすくなります。
肌も同じです。長い便では、到着するころに手や顔がつっぱる感じがすることがあります。
体から水分が失われている感覚は、あまりはっきりしません。汗をかいていなくても、呼吸や肌から少しずつ水分が出ていきます。喉が渇いたと感じる前に飲むほうがよい、というのはこのためです。
お酒は、水と一緒に
機内でお酒を楽しむ方も多いと思います。気圧が低く乾燥した機内では、地上より酔いが回りやすく感じるといわれます。お酒には体から水分を出す働きもあるので、乾燥とも重なります。
飲むときは、同じくらいの量の水を一緒にとる。それだけで、到着後の体の重さがかなり違うはずです。眠る前に一杯の水を飲んでおくのもおすすめです。
機内でできること
乾燥そのものはなくなりませんが、対処はできます。
- こまめに水分をとる(アルコールとカフェインは利尿作用があるので、水やお茶を足す)
- マスクをする(吐いた息の水分が口元に残ります)
- コンタクトレンズを外し、眼鏡にする
- 保湿クリームやリップを持ち込む
- 目薬を用意する(目が乾きやすい方)
- 鼻の乾燥が気になる方は、濡らしたハンカチを口元に当てるだけでも楽になります
私自身も、乗務中は水を近くに置いて少しずつ飲むようにしています。
おわりに
機内が乾燥するのは、上空の空気に水分がほとんどないためです。機体の腐食を防ぐ理由もあって、積極的な加湿は行われていません。787のように複合材を使った機体では、湿度を高めに設定できます。
長い便では、水分をとることを意識していただければと思います。




