飛行機の燃料は、どうやって量を決めているのか

おはようございます。
「飛行機は、燃料を満タンにして飛ぶのですか」
そう聞かれることがあります。答えは「いいえ」です。燃料はその日ごとに計算して、必要な量だけを積みます。今日は、その決め方についてお話しします。
満タンにしない理由は、重さ
燃料は重いものです。たくさん積めば、そのぶん機体が重くなります。
重い機体を飛ばすには、より大きな力が必要になり、結果として燃料を余計に使います。つまり「使わない燃料を運ぶために、燃料を使う」という状態になります。これは効率が悪く、費用も環境への負荷も増えます。
だから、多すぎず少なすぎない量を、毎回計算して決めます。
積む燃料は、いくつかの部分でできている
燃料の量は、大きく次のような要素を足し合わせて決めます。
- 目的地まで飛ぶぶん:計画した経路・高度・その日の風で計算します
- 代替空港まで飛ぶぶん:目的地に降りられなかったとき、別の空港へ向かうための燃料
- 上空で待つぶん:混雑などで着陸を待つ場合に備えた燃料
- 予備のぶん:計算どおりにいかない場合に備えた余裕
「目的地まで届けばいい」ではなく、降りられなかった場合まで含めて考えるのが基本です。
これは各社が独自に決めているのではなく、法律で定められています。日本では航空法施行規則の第153条に、搭載すべき燃料の条件が書かれています。たとえば、航空運送事業に使うジェット機が計器飛行方式で飛び、代替空港を飛行計画に示す場合は、目的地までの燃料、そこから代替空港までの燃料、さらに代替空港の上空450メートルで30分間待機できる燃料などを積むことが求められます。「余裕を持つ」は気持ちの問題ではなく、決められた基準です。
燃料は、重さで計算します
ガソリンスタンドではリットルで給油しますが、飛行機の燃料は重さで計算します。キログラムやポンドです。
理由は、燃料の体積が温度で変わるからです。同じ量の燃料でも、暖かいと膨らみ、冷えると縮みます。一方、エンジンが燃やして力を出す量は、体積ではなく重さで決まります。機体の重さの計算にもそのまま使えるので、重さで扱うほうが確実です。
ジェット燃料は、1リットルがおよそ0.8キログラムです。長距離の大型機になると、積む燃料は100トンを超えることもあります。
風の予報が、量を左右する
同じ路線でも、その日の風によって必要な燃料は変わります。
向かい風が強ければ、進むのに時間がかかり、燃料も多く必要になります。追い風なら、その逆です。だから燃料計算は、いつもその日の気象予報とセットで行います。
前に書いたジェット気流の話とつながりますが、風を読むことは、時間だけでなく燃料の話でもあります。
燃料は凍らないのか
上空の外気は、氷点下50度を下回ることがあります。長い時間その中を飛ぶと、翼の中の燃料も冷えていきます。
旅客機で広く使われているジェット燃料は、灯油に近い成分で、氷点下40度台まで凍らないように作られています。それでも寒い空域を長く飛ぶ便では、燃料の温度を計器で見ながら飛びます。温度が下がりすぎそうなら、高度を下げて暖かい空気の中に移る、速度を上げるといった対応をとります。
エンジンに送られる燃料は、途中でエンジンのオイルの熱を使って温められます。燃料に含まれるわずかな水分が凍って、細い配管やフィルターを詰まらせないようにするためです。
給油は、空港の給油担当の作業員が、計算された量をタンク車や地下の配管から入れます。入った量は、操縦席の計器の表示と給油の記録の両方で確かめ、食い違いがないかを見ます。
安い空港で多めに積むこともあります
燃料の値段は、空港によって違います。そのため、行き先の空港の燃料が高い場合に、出発地で帰りのぶんまで多めに積んでおくことがあります。
ただし、先に書いたとおり、余分な燃料を運ぶと、そのぶん燃料を多く使います。値段の差が、余計に使う燃料のぶんを上回るときだけ意味があります。着陸できる重さの上限も守らなければなりません。このため、毎回計算して判断します。
飛んでいる間も、確認を続けます
燃料の確認は、出発前で終わりではありません。
飛行中は、決まった地点を通過するたびに、計画していた残りの量と、実際の残りの量を比べます。風が予報と違えば、減り方も変わります。計画より減りが早ければ、原因を考えます。風のせいなのか、それとも燃料がどこかから漏れていないか。
残りの量が、目的地と代替空港までに必要な量を割り込みそうになれば、経路や高度を変える、途中の空港に降りるといった判断をします。
出発前に、二人で確認する
計算した燃料の量は、飛行計画としてまとめられます。私たちは出発前にその内容を確認し、その日の状況に照らして妥当かを判断します。
天候が崩れそうなときや、目的地が混雑しそうなときは、余裕を多めに取ることもあります。最終的に「この燃料で出発する」と決めるのは、機長の判断です。
おわりに
飛行機の燃料は、満タンではなく、その日の条件に合わせて計算した量を積んでいます。目的地までのぶんに加えて、代替空港・待機・予備といった余裕を含めて考えます。
軽くしすぎず、重くしすぎず。地味な計算ですが、毎回の出発前に必ず確認している作業のひとつです。




