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航空知識

着陸でドンと衝撃が来る日と、来ない日の違い

おはようございます。

「今日の着陸は上手でしたね」と言っていただくことがあります。ありがたいのですが、少し困ることもあります。

ふわりと降りた日と、はっきり衝撃があった日。その差は、必ずしも腕の差ではありません。今日は、その話をします。

滑らかさは、目標の一番上ではありません

まず前提をお話しします。

着陸で最も大事なのは、決められた区域に、決められた姿勢で、決められた速度で接地することです。滑走路の手前側には接地帯という区域があり、そこに降ろします。

滑らかさは、その条件を満たしたうえでのおまけです。優先順位としては、かなり下のほうにあります。

浮いたまま滑らかに降りようと粘ると、接地の位置がどんどん奥へずれていきます。残りの滑走路が短くなり、止まるための距離が削られます。これは避けなければなりません。

滑らかに降りることと、狙った場所に降りること。両方は、いつも同時には成り立ちません。

濡れた滑走路では、あえて確実に接地させます

雨の日、私たちはあえてはっきりと接地させることがあります。

理由は3つあります。

ひとつめは、車輪を確実に回し始めるためです。濡れた路面では、タイヤと路面のあいだに水の膜ができて、接地が失われることがあります。しっかり荷重をかけて、この膜を切ります。

ふたつめは、機体に「地上にいる」と認識させるためです。飛行機には、車輪に体重がかかったことを検知する仕組みがあります。これが働いてはじめて、翼の上の板が立ち上がり、自動ブレーキが効き始め、逆推力が使えるようになります。ふわりと浮いたままだと、この一連の動作が始まりません

みっつめは、時間です。接地から減速の開始までが遅れるほど、止まるのに使える距離が減ります。

接地帯 ここから減速開始 止まるのに使える距離:たっぷり 浮いたまま粘る 残りが短い
滑らかに降りようと粘ると、止まるための距離が削られます。

風が強い日も、長引かせません

横風や、風向きが目まぐるしく変わる日も同じです。

地面すれすれで浮いた状態を続けるほど、風に押されて機体の位置がずれていきます。中心線から外れたり、姿勢が崩れたりする余地が増えます。

そういう日は、姿勢が整っているうちに接地させます。粘らないほうが、結果として安定します。

短い滑走路も同様です。使える距離に余裕がないなら、狙った場所へ確実に降ろします。

それでも、上手い下手はあります

もちろん、条件が良い日にきれいに降ろせるかどうかは、腕の話です。乾いた長い滑走路で、風も穏やかで、それでもドンと来たなら、その日はうまくいかなかったということです。

私たちの着陸は記録に残ります。接地したときの上下方向の加速度が数値として残り、一定の値を超えれば整備の点検対象になります。ごまかせません。

ですから、条件のいい日はきれいに降ろしたいと思っています。ただ、条件が悪い日にきれいさを優先することはありません。

おわりに

着陸の衝撃は、必ずしも失敗の印ではありません。濡れた滑走路や短い滑走路、風の強い日には、あえてはっきりと接地させています。

ふわりと降りた日は、条件に恵まれた日でもあります。ドンと来た日は、その日の条件に合わせた降り方をした日だと思っていただければ幸いです。