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航空知識

同じ空港でも、使う滑走路が日によって違うのはなぜか

おはようございます。

同じ空港に何度も行くと、降りる方向が日によって違うことに気づきます。行きは海から入ったのに、帰りは山側から入った、というようなことです。

今日は、その日に使う滑走路がどう決まるのかを説明します。

原則は「風上に向かって」

いちばん強い条件は風です。飛行機は風上に向かって離着陸します。

翼が浮く力は、翼が受ける空気の勢いで決まります。向かい風があれば、機体の進む速さが同じでも、翼が受ける空気は強くなります。その結果、短い距離で浮き、短い距離で止まれます。

追い風だと逆になります。同じだけ浮かせるのに長い距離が必要になり、着陸では接地してからも速度が落ちにくくなります。そのため、追い風には上限が決められています。多くの機種で10ノット前後です。

空港は、その時間に使う滑走路を決めて知らせます。風向きが変われば、途中で向きを入れ替えることもあります。到着が集中する時間帯の入れ替えは、全体の流れを一度止めることになるため、空港側も慎重に決めています。

同じ滑走路でも、風で向きが変わる 1本の滑走路(両方向から使える) 機首の向き 風 向かい風で離着陸する 短い距離で浮き、短い距離で止まれる 追い風の上限は多くの機種で10ノット前後
風向きが変われば、同じ滑走路を反対から使います。

滑走路の番号は方位から付いています。同じ1本でも、反対から使えば番号が18違います。番号の話は別の記事で書きました。

騒音への配慮で決まることもあります

風がそれほど強くない日は、別の条件が前に出ます。騒音です。

市街地の上を低い高度で飛ぶ時間を減らすため、空港ごとに使う滑走路や経路の決まりがあります。夜間だけ海側から進入する、特定の方向への離陸を避ける、といった運用です。

羽田の新しい経路も、風向きと時間帯で使い分けられています。こちらは別の記事に書きました。

騒音の決まりは、安全より優先されることはありません。風が強い日や天候が悪い日は、安全を優先して通常の使い方に戻ります。

長さと設備でも変わります

同じ空港でも、滑走路の長さは1本ずつ違うことがあります。重い機体が長い距離を飛ぶときは、長いほうの滑走路を使います。

進入の設備も条件になります。視程が悪い日は、電波で滑走路まで導いてくれる設備のある側しか使えません。設備の整った方向が、たとえ少しの追い風でも選ばれることがあります。ILSの話は別の記事で書きました。

工事で一時的に閉鎖されることもあります。滑走路の表面や灯火の整備は、便の少ない夜間に行われることが多く、その間は別の滑走路が使われます。

横風にも限度があります

風は、向かい風ばかりではありません。滑走路に対して横から吹くこともあります。

横風にも機種ごとの上限があり、滑走路が乾いているか濡れているかでも変わります。上限に近い横風のときは、より風の正面に近い滑走路があればそちらを選びます。選べる滑走路がなければ、風が弱まるのを待つか、別の空港へ向かいます。

横風の中でどう降りるかは、別の記事に書きました。

滑走路の状態も条件です

雨や雪の日は、止まりやすさが変わります。空港は滑走路の状態を数字で知らせ、パイロットはその数字で着陸の計算をやり直します。

雪のあとは除雪が必要です。1本ずつ順番に除雪するため、その間は別の滑走路が使われます。除雪が終わるまで着陸を待つこともあります。

複数の滑走路は、同時に働いています

滑走路が複数ある空港では、離陸用と着陸用を分けることがあります。2本が平行に並んでいる空港では、同時に進入させる運用もあります。

これにより、1時間に扱える便数が増えます。到着が集中する時間帯に、着陸する機体が次々に降りてこられるのは、この使い分けによるものです。

混雑した空港では、どの滑走路のどの位置から離陸するかまで指示されます。滑走路の途中から離陸することもあり、その場合は使える距離が短くなるので、改めて計算し直します。

離陸の滑走路が変わることもあります

出発のときも、途中で変わることがあります。管制の都合で「別の滑走路から出てください」と指示されるのは珍しくありません。

このときは、離陸の速度を計算し直します。滑走路の長さと向き、そのときの風が変わるためです。使う出発の経路も変わるので、コンピューターに入れ直します。手間はかかりますが、待ち時間が短くなることも多く、全体では早く出発できます。

逆に、こちらから別の滑走路を希望することもあります。長いほうの滑走路を使いたいとき、重い機体で暑い日のときなどです。空港の流れしだいで通ることも、断られることもあります。

パイロットは何をしているか

使う滑走路は、出発前の打ち合わせの時点でほぼ分かります。空港の情報の放送や、会社から届く資料で確認します。

ただし、到着のころに風が変わることもあります。進入の途中で滑走路が変わる指示を受けることもあり、その場合は入力をやり直し、進入の方式と最低気象条件を確認し直します。これを慌ててやると抜けが出るので、急がず、2人で確認し直すことが大事になります。

おわりに

その日に使う滑走路は、風を第一に、騒音、滑走路の長さ、進入の設備を合わせて決まります。追い風には上限があり、多くの機種で10ノット前後です。

窓の外を見て「行きと帰りで降りる方向が違う」と気づいたら、その日の風向きが変わったか、時間帯による決まりが働いたということです。