離陸をやめるか、続けるか。V1という速度の話

おはようございます。
滑走路を走り出してから浮き上がるまでは、短い時間です。その間に何かが起きたとき、私たちは「やめる」か「続ける」かを決めなければなりません。
今日は、その判断を分ける速度についてお話しします。
V1という速度があります
離陸のとき、あらかじめ3つの速度を計算しておきます。
- V1:ここまでなら止められる、という速度
- VR:機首を持ち上げ始める速度
- V2:万一エンジンが1つ止まっても、安全に上昇できる速度
このうちV1が、判断の分かれ目です。
V1より前に不具合が起きれば、離陸をやめて滑走路内で止まります。V1を過ぎていれば、たとえエンジンが1つ止まっても離陸を続けます。止まりきれずに滑走路の端を越えてしまうほうが危険だからです。
数字は毎回変わります
V1は決まった数字ではありません。機体の重さ、滑走路の長さ、その日の気温、風、滑走路の状態から、毎回計算します。
同じ空港でも、満席で燃料を多く積んだ日と、空いている日とでは違います。気温が高い日は空気が薄くなるため、同じ滑走路でも数字が変わります。出発前に必ず計算し、2人で確認します。
迷わないための線引きです
なぜここまで細かく決めておくのか。加速している最中に考えている時間がないからです。
時速200キロ近くで滑走路を走っているとき、その場で条件を計算し直す余裕はありません。だからあらかじめ数字を出しておき、「この速度より前ならやめる、過ぎたら続ける」と決めておきます。
離陸をやめる操作も決まっています。出力を絞り、ブレーキをかけ、逆推力を使う。この一連の動作は、訓練で繰り返し確認します。
実際に中止することは多くありません
離陸を中止する場面は、そう頻繁にはありません。ただ、起こり得ることとして毎回準備しています。
滑走路に入る前、「V1より前に何かあれば中止、過ぎたら継続」という前提を2人で共有してから加速を始めます。
おわりに
離陸中に不具合が起きたとき、やめるか続けるかはV1という速度で決まります。数字は毎回計算し、飛ぶ前に2人で確認しています。
滑走路を加速している数十秒の裏側には、こうした線引きがあります。




