※ 本サイトはアフィリエイト広告およびGoogle AdSenseによる広告を含みます

機長コラム

出発までの時間、パイロットは何をしているのか

おはようございます。

飛行機に乗るとき、パイロットの姿を見かけるのは、搭乗口の近くや、操縦席の窓越しくらいだと思います。お客様が搭乗を始めるころには、パイロットはもう操縦席に座っています。

では、それまでの時間に何をしているのか。今日は、出社してから飛行機のドアが閉まるまでの流れを、順番に書いてみます。会社や路線によって細かい違いはありますので、ここでは共通する部分を中心にします。

出社したら、まずアルコール検査です

出社していちばん最初に行うのは、アルコール検査です。

日本の航空会社では、乗務の前と後に、アルコール検知器による検査を受けることが義務づけられています。基準値も国で決められていて、わずかでも検出されれば乗務できません。検査は記録に残り、なりすましができないよう、立ち会いや写真などで本人確認をします。

あわせて、その日の体調も確認します。眠れているか、薬を飲んでいないか。体調に不安があれば、無理に乗務はしません。自分から申告できることが、仕事の前提になっています。

飛行計画と天気を確認して、燃料を決めます

次に、その便の飛行計画を確認します。

飛行計画は、会社の運航管理の担当者が、あらかじめ作っています。どの経路を、どの高度で飛ぶか。出発地・目的地・途中の空港の天気はどうか。空港や経路に、滑走路の閉鎖などの変更がないか。こうした情報がまとめられています。

機長と副操縦士は、これを一つずつ読み、疑問があれば運航管理の担当者と話します。天気が崩れそうなら、代わりに降りる空港をどこにするか、燃料をどれだけ足すかを決めます。

出発前の打ち合わせで確認すること 経路と高度 天気 空港・経路の 変更情報 機体の状態 燃料 機長 + 運航管理者の双方が同意 どちらか一方だけでは出発できない 燃料は「足りるか」だけでなく、降りられなかったときの分まで決める
出発の判断は、機長と運航管理者の2人がそろって初めて成り立ちます。

日本の航空運送事業では、機長が出発するには、運航管理者の承認が必要と法令で決められています。機長だけで決めることも、運航管理者だけで決めることもできません。2人が同じ計画に同意して、はじめて出発できます。

燃料については、以前の記事で詳しく書きました。目的地までの分だけでなく、目的地に降りられず代わりの空港へ向かう分、そこで待つ分まで、法令で決められた考え方で積みます。

機体の状態も確認します。前の便までに見つかった不具合があれば、それが整備でどう処置されているか、そのまま飛んでよいものかを、記録で確かめます。

客室乗務員と打ち合わせをします

操縦席の2人だけで飛ぶわけではありません。客室乗務員とも打ち合わせをします。

伝えるのは、飛行時間、揺れが予想される時間帯と強さ、到着地の天気などです。揺れが予想されるなら、機内サービスをいつ始めていつ終えるか、ここで相談します。客室側からは、お手伝いが必要なお客様がいるか、といった情報をもらいます。

もうひとつ大事なのが、非常時の合図や連絡の方法を確認することです。何かあったとき、操縦席と客室がどうやって情報をやりとりするか。毎回、同じ内容でも確認します。組むメンバーがその日ごとに違うからです。

機体の外を歩いて点検します

飛行機に着いたら、パイロットのうち1人が機体の外を1周して点検します。

見るのは、たとえば次のようなところです。

  • タイヤがすり減っていないか、空気圧に異常がないか
  • 機体の表面に、へこみや傷がないか
  • 燃料や油が漏れていないか
  • エンジンの入口に、異物や損傷がないか
  • 速度や高度を測る管やセンサーのカバーが外されているか

整備士も点検をしていますが、飛ぶ本人の目でもう一度確かめます。2つの目で見ることで、見落としを減らします。

操縦席の準備をします

操縦席に入ると、計器とスイッチを決められた順番で確認していきます。

飛行管理のコンピューターに、経路、高度、機体の重さ、離陸の速さなどを入力します。入力は1人が行い、もう1人が入力された内容を別に確かめます。1人で入れて1人で確かめると、同じ思い込みで間違いを見逃すからです。

離陸で何かが起きたときに何をするかも、ここで打ち合わせます。どの速さまでなら止まるか、止まらずに離陸したらどう飛ぶか、どの空港へ戻るか。実際に起きる前に、2人で同じ絵を頭に入れておきます。

出発の少し前には、管制から飛行の許可を受け取ります。どの経路で出発し、最初にどの高度まで上がるか、といった内容です。受け取ったら復唱し、コンピューターに入れた経路と合っているかを2人で確かめます。

最後に、お客様の人数、貨物の重さ、燃料の量の最終の数字が届きます。それをもとに離陸の速さを確定させ、チェックリストを読んで、準備が終わります。

出発の時刻は、ここまでの積み重ねです

ドアが閉まり、機体が動き出す時刻は、ここまでのすべてが終わっていることが前提です。

どこか1か所で確認が必要になると、出発が遅れることがあります。天気が変わって燃料を足す、機体に不具合の表示が出て整備士が確認する、といった場合です。出発が遅れている間の操縦席の様子については、以前の記事で書きました。

おわりに

パイロットの仕事は、搭乗が始まるずっと前から始まっています。出社したらアルコール検査と体調の確認、次に飛行計画と天気を読み、運航管理者と燃料を決めます。客室乗務員と打ち合わせをし、機体の外を歩いて点検し、操縦席でコンピューターの入力を2人で確かめます。

出発には、機長と運航管理者の両方が計画に同意していることが必要です。窓越しに操縦席の2人が見えたときは、その準備がひととおり終わった段階だと考えていただければ、実態に近いと思います。