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航空知識

東へ飛ぶか西へ飛ぶかで、飛べる高度が決まっている

おはようございます。

飛行機の座席モニターで、高度が「11,277メートル」や「37,000フィート」と表示されているのを見たことがあるかもしれません。帰りの便で同じ画面を見ると、「36,000フィート」のように、行きとは少し違う数字になっていることがあります。

これは偶然ではありません。飛行機が巡航する高度は、進む向きによって使える数字が分けられています。

今日は、その巡航高度の決まりについて説明します。

進む向きで、奇数と偶数に分かれます

日本では、巡航高度の決まりは航空法施行規則(国の省令)の第177条に書かれています。旅客機のように計器飛行方式(管制の指示と計器を頼りに飛ぶ方式)で飛ぶ場合、骨格はこうなっています。

  • 磁方位0度以上180度未満で飛ぶとき:1,000フィートの奇数倍の高度
  • 磁方位180度以上360度未満で飛ぶとき:1,000フィートの偶数倍の高度

磁方位とは、方位磁石が指す北を0度として、時計回りに測った進む向きのことです。90度が東、180度が南、270度が西になります。

つまり、東寄りに進む便は31,000、33,000、35,000フィートのような奇数、西寄りに進む便は32,000、34,000、36,000フィートのような偶数の高度を使います。

「東へ」「西へ」と書きましたが、正確には0度(北)から179度までが奇数のグループ、180度(南)から359度までが偶数のグループです。真北に向かう便は奇数、真南に向かう便は偶数になります。

41,000フィートより上では間隔が広がり、東寄りは45,000、49,000フィート、西寄りは43,000、47,000フィートのように4,000フィートおきになります(同じく第177条)。

ちなみに、飛行機の高度はメートルではなくフィートで扱います。1,000フィートは約300メートルです。

世界中で、ほぼ同じ決まりです

この考え方は日本だけのものではありません。国際民間航空機関(ICAO:国連の専門機関で、国際航空の標準を決めている組織)は、条約の附属書(Annex 2「航空規則」)に巡航高度の表を定めています。そこでも、磁方位000度から179度は奇数、180度から359度は偶数という分け方です。

アメリカの規則も同じです(米国連邦航空規則14 CFR 91.179)。国際線の飛行機が国境を越えても、同じ決まりで高度を選べるようになっています。

なお、目で見て飛ぶ有視界飛行方式の小型機は、29,000フィート未満で奇数または偶数の1,000フィートに500フィートを足した高度を使います(航空法施行規則第177条)。たとえば東寄りなら3,500フィートや5,500フィートです。計器飛行方式の機体とは、500フィートずれるように作られています。

なぜ、向きで分けるのか

理由は単純です。向かい合って飛ぶ飛行機同士を、必ず上下に離すためです。

東寄りの便が奇数、西寄りの便が偶数を使えば、すれ違う相手とは少なくとも1,000フィート高さが違います。同じ向きに進む便同士なら、2,000フィートずつ離れることになります。

正面から近づく2機は、互いの速度を足した速さで距離が縮まります。旅客機同士なら、横から追い越すよりはるかに速く近づきます。だから、向かい合う相手との間に、最初から高さの差を作っておくのです。

向きごとの巡航高度(FL290〜FL410の例) 東寄り(磁方位0〜179度) 西寄り(磁方位180〜359度) FL410 FL400 FL390 FL380 FL370 FL360 FL350 FL340 FL330 FL320 FL310 FL300 FL290 1,000ft 2,000ft すれ違う相手とは1,000フィート、同じ向きの相手とは2,000フィート離れる
FLはフライトレベル(標準の気圧で測った高度を100フィート単位で表したもの)。FL350は35,000フィートです。

高い空では、昔は2,000フィート離していました

図に描いたFL290からFL410(29,000フィートから41,000フィート)は、旅客機がいちばんよく使う高さです。

この高さでは、かつては上下の間隔を2,000フィートとっていました。FL290より下では1,000フィートだったのに、それより上では倍の間隔が必要とされていたのです。

ICAOは1970年代の終わりから、この間隔を縮められるかどうかの研究を始めました。1980年代にはカナダ、ヨーロッパ、日本、アメリカで研究が行われ、安全に縮められるという結論になりました。最初に導入されたのは北大西洋で、1997年3月にFL330からFL370の間で運用評価が始まっています(ICAO RVSM運用マニュアル)。

それを1,000フィートに縮めたのが、RVSM(短縮垂直間隔:上下の間隔を縮めて運用する方式)です。FL290からFL410の間で、1,000フィートおきの高度をすべて使えるようにしました。アメリカの航空情報マニュアル(AIM:パイロット向けの公式の手引き)は、RVSMは世界中で導入されていると説明しています(AIM 4-6-1)。

使える高度が2倍近くに増えたことで、各便がより燃費のよい高さを選びやすくなりました。AIMも、RVSMの利点として燃料の節約と、より効率のよい高度で飛べることを挙げています。

1,000フィートで飛ぶには、許可が必要です

上下わずか300メートルの間隔で、高速の旅客機同士がすれ違う。これを安全に行うには、高度を正確に保てることが前提になります。

日本では、この「他の航空機との垂直方向の間隔を縮小する方式による飛行」は、国の許可が必要な特別な方式として定められています(航空法第83条の2、航空法施行規則第191条の2)。巡航高度の表でも、1,000フィートおきに飛べるのは、この許可を受けた機体と規定されています(第177条)。

求められる装備の例として、アメリカの規則(14 CFR Part 91 Appendix G)には次のような条件があります。

  • 独立した2系統の高度計測システムを持っていること
  • 決めた高度を自動で保つ装置があり、揺れのない水平飛行でプラスマイナス65フィート以内に保てること(新しい型式の場合)
  • 表示高度が選んだ高度から200フィート以上ずれたら警報が鳴ること(新しい型式の場合)

さらに、運航者は実際の高度の保ち方を監視するプログラムに参加することが求められています(AIM 4-6-3)。許可を受けていない機体がこの高さに入る場合、他の機体とは2,000フィートの間隔がとられます(AIM 4-6)。

巡航中に自動操縦で高度を保つのは、この精度を守るためでもあります。自動操縦中の操縦席の仕事については、自動操縦の記事で書きました。

高い空の高度は、標準の気圧で測ります

もう一つ、大事な前提があります。この高さの高度は、その場所の気圧ではなく、**標準の気圧(1013.2ヘクトパスカル)**に高度計を合わせて測ります。

日本の規則では、平均海面から14,000フィート未満ではその地点の気圧(QNH)で、それ以上では標準気圧で高度計を合わせることになっています(航空法施行規則第178条)。

全員が同じ基準で測るから、「35,000フィートと36,000フィート」の差が、どの飛行機にとっても同じ1,000フィートになります。この仕組みは高度計の記事で詳しく書きました。

高度を変える理由:燃料、揺れ、風

では、パイロットは決められた高度の中から、どうやって高さを選ぶのでしょうか。主に3つの要素があります。

1つ目は重さと燃料です。ジェット機は空気の薄い高い空を飛ぶほど燃費がよくなります(理由は飛行機が高い空を飛ぶ理由の記事で書きました)。ただし、重いうちはそこまで上がれません。燃料を使って軽くなるにつれて、最も効率のよい高度は上がっていきます。そのため長距離便では、途中で段階的に高度を上げていくことがあります。これをステップクライムと呼びます。飛行管理装置(FMS:経路や性能を計算する機内のコンピュータ)が、重さや風をもとに最適な高度を計算します。

**2つ目は揺れです。**ある高さで揺れが続いているとき、上下の高度で揺れが少ないと分かれば、高度を変えることを考えます。先に飛んだ便からの報告や予報が手がかりになります。揺れの原因については乱気流の記事で書きました。

**3つ目は風です。**高さによって、風の向きと強さは大きく違います。追い風が強い高さを選べば早く着き、燃料も減ります。向かい風が強い高さは避けたい。西から東へ流れるジェット気流は、東行きと西行きで所要時間が変わる理由の一つです。ジェット気流の記事もあわせてどうぞ。

ここで、今日の決まりが関わってきます。向きによって使える高度は奇数か偶数に限られるので、選べるのは2,000フィートおきの候補の中からです。最適な高度がちょうど使えない数字なら、その上か下を選ぶことになります。

実際には、管制と調整して決めます

最後に、もう一つ大事な点があります。

航空法施行規則第177条には、括弧書きで**「高度について指示された場合は、当該指示に係る高度」**とあります。つまり、管制から高度を指示されたら、その高度で飛びます。

パイロットが高度を変えたいときは、無線で管制に要求します。管制官は、その高さを飛んでいる他の便や、前後の間隔を見て、許可するか、待ってもらうか、別の高度を指示するかを決めます。混んでいる時間帯や経路では、希望の高度がすぐにもらえないこともあります。

パイロットが勝手に高度を変えることはありません。燃料、揺れ、風を考えて希望を伝え、管制が全体の交通を見て決める。この役割分担で、巡航高度は決まっています。管制とのやりとりについては、管制無線の記事でも書きました。

おわりに

旅客機の巡航高度は、進む向きで分けられています。磁方位0度から179度なら奇数、180度から359度なら偶数の1,000フィート単位です。日本では航空法施行規則第177条、国際的にはICAOの附属書に定められています。

向かい合う飛行機同士は少なくとも1,000フィート離れ、同じ向き同士は2,000フィート離れます。この1,000フィートの間隔で飛ぶには、高度を正確に保つ装置と、国の許可が必要です。

その範囲の中で、燃料、揺れ、風を考えて希望の高度を選び、管制と調整して決めています。

次に飛行機に乗ったら、座席モニターで高度と進む方角を見てみてください。東寄りに進んでいれば奇数、西寄りなら偶数の高度になっていることが多いはずです。管制の指示で例外になることもあり、メートル表示の場合は換算した値なので、きりのよい数字にはなりません。